特定技能と技能実習の違いとメリット・デメリット

特定技能と技能実習のどちらを活用すればよいか悩まれる方は多いと思います。
制度自体が複雑で難しいことから本記事では、特定技能と技能実習の違いについて説明します。
目次
技能実習と特定技能の関係
在留資格「技能実習」は発展途上国への技術貢献を目的として創設されましたが、最長5年間の日本滞在で終了する制度でした。このため、日本企業の人材不足を解消するために改正入管法が施行され2019年4月に創設されたのが在留資格「特定技能」になります。これにより、技能実習3年もしくは5年の後、さらに特定技能で5年間就業することが可能となりました。また、「建設」「造船・舶用工業」においては「特定技能2号」も創設され、期限なしで滞在できるようにしたことも大きなポイントです。
特定技能と技能実習の差
就業可能な業種
特定技能と技能実習で行えることが異なります。
特定技能1号
特定技能1号では、建設業、造船・舶用工業、自動車整備業、航空業、宿泊業、介護、ビルクリーニング、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業、素形材産業、産業機械製造業、電気電子情報産業の14業種が許可されています。
技能実習
技能実習では、農業、漁業、建設業、食品製造業、繊維・衣服、機械・金属、その他(家具製作、印刷、製本、プラスチック成形、塗装、溶接、工業包装、紙器。段ボール箱製造、陶磁器工業製品製造、自動車整備、ビルクリーニング、介護、リネンサプライ、コンクリート製品製造、宿泊、RPF製造、手鬱同施設保守整備、ゴム製品製造)の85職種156作業が許可されています。
転職について
技能実習では基本的に実習先を変更することはできません。基本的に3年間同じ実習先で実習を受けます。一方、特定技能では同一分野への転職が可能です。
企業が受け入れられる人数の上限について
技能実習には受け入れの上限がありますが、特定技能では介護・建設以外は受け入れ人数に制限はありません。
※特定技能「建設」の受け入れ上限は、特定技能と特定活動で就労する外国人の合計が受け入れ企業の常勤社員の人数となっています。
※特定技能「介護」の受け入れ上限は、事業所単位で日本人等の常勤介護職員の総数となっています。
※技能実習では常勤職員総数により、受け入れることができる人数に制限があります。
301人以上 | 常勤職員総数の20分の1 |
---|---|
201人以上300人以下 | 15人 |
101人以上200人以下 | 10人 |
51人以上100人以下 | 6人 |
41人以上50人以下 | 5人 |
31人以上40人以下 | 4人 |
30人以下 | 3人 |
外国人と企業を支援する機関が違う
技能実習
技能実習の場合、自社で研修・手続きをすべて完結させる場合を除き、監理団体に登録を行います。これを団体監理型と呼びます。監理団体はスムーズに技能実習生が企業に受け入れられるようフォローを行いますが、主な目的は企業の監督・指導になります。監理団体は3カ月に1回以上の頻度で実習実施者を監査します。
特定技能
特定技能では、任意で登録支援機関を利用します。登録支援機関は外国人の支援を目的としています。自社で義務とされているすべての特定技能外国人への支援事項ができるのであれば登録支援機関は不要ですが、初めて特定技能の方を採用する場合は、とても複雑な手続きですので、相談されたい場面が多くなると思います。ですから特に初めての受け入れの場合は登録支援機関を利用することをおすすめします。
支払うコストの違い

特定技能は日本語能力試験と技能試験を合格された方か、技能実習を3年終えた方がなれる在留資格になりますので、一般的に持っている技術力、日本語能力は特定技能の方のほうがほぼ高いことになります。よって、企業に受け入れる場合、特定技能に支払う人件費のほうが高くなりますが、登録支援機関の利用料金は約月2万から4万であり、監理団体よりも安いことが多く、受け入れるまでのイニシャルコストも支払う必要がないため、メリット・デメリットがあります。お任せする業務と在留資格で何が許されているかを検討し、どちらの在留資格の方が向いているかを検討する必要があります。
特定技能と技能実習の使い分け(メリット・デメリット)
特定技能で行える14の分野と、技能実習2号で行える分野は多くが一見重複しているように見えますが、外食は特定技能のみしか認められておらず、繊維・衣服は技能実習のみしか認められておりません。この場合は、シンプルに外食の場合は、特定技能を、繊維・衣服は技能実習を選択することになります。
他は企業の状態・求める人材選択が変わりますが、次の3つの場合は次がおすすめです。
支払う給与額に自信がない場合
技能実習を利用することをお勧めします。技能実習は基本的に実習先が固定されており、転職することなく3年間実習を受けてくれますが、特定技能は同じ業種であれば転職は自由です。特定技能で働くために来日したとしても、他に条件がよいところがあれば転職することが可能ですので、都会の給与と比べて給与額が低いと思われる場合は、技能実習を利用することをお勧めします。
業務遂行に熟練度が必要ではない場合
技能実習を利用することをおすすめします。熟練が必要ないのであれば、技能実習を活用することで、特定技能よりも給与を抑えつつ、安定的に業務を遂行していくことができます。
業務遂行に熟練度が必要な場合
特定技能の利用をおすすめします。うまく活用に成功されている企業では、技能実習で実習を行い、3年間のうちに今後も活躍しそうな方を見極め、活躍が見込まれる方については特定技能として給与を日本人と同じ水準かそれ以上を支払って受け入れておられるケースもあります。
人材採用を急ぐ場合
日本在住の特定技能資格者の採用をおすすめします。技能実習生は海外から招くしか方法がなく、最低でも6ヶ月はかかります。介護職では1年以上かかります。
もし今すぐに外国人を雇用したい場合は、日本在住の外国人で、特定技能の資格を保有している人を採用することをおすすめします。
留学生が特定技能試験に合格した場合と、同職種の技能実習3年を修了した場合に特定技能の資格が得られますので、もし人材採用を急ぐ場合は、これらの日本在住の特定技能資格者を紹介している専門の人材紹介会社に依頼することをおすすめします。
人事ができること
少子高齢化と労働人口減少により、人材採用が難しくなっていくなかで、事業が持続的に存続・成長していくためには外国人を受け入れることは強力な打ち手の一つとなるはずです。このまま採用難化が続いた場合に、事業が持続的に成長可能とできるよう人材確保の切り口を用意しておくことは重要です。もし、日本人のみの採用ではすでに限界を感じられているのであれば、是非各業務に求められる要件・投資するコストの整理から始め、外国人を受け入れた場合とそうでない場合の事業戦略成功可能性のシミュレーションをしてみてはいかがでしょうか。
大手転職エージェント・転職Web求人媒体の収益は、リーマンショック・コロナの期間を除き、ほぼ増収増益がここ20年続いています。現在では、コロナの影響も脱し、再び最高収益並みを予想している会社も少なくありません。人材確保の観点からも、採用コスト削減の観点からも外国人の採用は大きな効果が出るかもしれません。
さいごに
技能実習は基本的に3年、最高で5年で終了でしたが、改正入管法により特定技能ができたため、技能実習終了後に5年間日本で働くことができるようになり、建築、造船・舶用工業に関しては、期限なく働くことができるようになりました。今後も労働人口が減少することは確定しており、分野も広がる可能性が高いといわれています。
特定技能・技能実習の大きな差は、対象分野と、転職の可否と、受け入れ可能人数であり、人事は各業務に求められる能力・各ポジションに投資する額を決め、効果的に外国人人材を受け入れることができます。
技能実習から人材を育て、3年の期間で見極めるのであれば、技能実習生にロイヤリティを感じていただけるような環境を整えておくことが必要であり、技能実習生の母国の文化・風習などを理解し、しっかりとコミュニケーションがとれる環境を整えておくことが必要です。それでなければ、特定技能になった際、転職は同じ技能であれば自由にできることになるので、より高い給与を支払う企業に移る可能性があり、3年間の育成の努力が無駄になる可能性があります。
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