2021.07.26 ビザ・在留資格
著作・監修 北中彰 最終更新日: 2021/09/27

特定技能「造船・舶用工業」|外国人を雇用するためには?

特定技能「造船・舶用工業」|外国人を雇用するためには?

目次

  1. 造船・舶用工業界の人手不足
  2. 特定技能「造船・舶用工業」とは?
  3. 「造船・舶用工業」の特定技能試験について
    1. 特定技能1号の試験について
    2. 特定技能2号の試験について
  4. 特定技能「造船・舶用工業」の対象職種
  5. 雇用について
    1. 雇用形態
    2. 給与
    3. 人員の上限
    4. 転職について
  6. 受け入れ企業(特定技能所属機関)に求められる条件

1.造船・舶用工業界の人手不足

日本では多くの業種で人手不足が深刻化していますが、その中でも造船・舶用工業分野は人手不足がかなり深刻な状況にあります。

国内の造船・舶用工業の生産拠点のほとんどが、瀬戸内海や九州などの地方圏に存在しています。 しかし、地方人口の減少に伴って、造船・舶用工業分野の雇用人口も減少し、現状で6,400人程度の人手不足が生じていると言われています。 地方人口の減少の原因は、若者の都市部への労働力の流出や、少子高齢化の問題です。

有効求人倍率を見ても、他の業界と比べ、圧倒的に人手不足であるということがわかります。 2017年度の「造船・舶用工業」分野における有効求人倍率は、溶接が2.50倍、塗装が4.30倍、鉄工が4.21倍、仕上げが4.41倍、機械加工が3.45倍、電気機器組立てが2.89倍となっています。 現状のままであれば、2023年には22,000人以上の人手不足となると予想されています。

現在、造船・舶用工業の担い手を拡大するために、従来以上に、採用の幅を拡大するための国策として様々な取り組みがされています。 国内では特に、女性の受け入れやシニア戦力の活用も視野に入れた人材確保を、産学官や地域が連携して取り組んでいます。

また、外国人の新しい採用制度として、2019年4月に外国人技術者の在留資格「特定技能」を施行し、外国人技術者の受け入れ拡大を図っています。 この「特定技能」で即戦力となる外国人技術者の雇用が進めば、急速に人手不足の緩和が期待できます。

以下では、特定技能外国人を、造船・舶用工業分野で雇用することについて述べます。

2.特定技能「造船・舶用工業」とは?

「特定技能」とは、人手不足が深刻な業種に対して、一定の専門性と技術を持つ外国人を受け入れるための在留資格です。 2019年44月に在留資格「特定技能」が創設され、建設業の「特定技能1号」「特定技能2号」の在留資格を持つ外国人の雇用が可能となりました。 「特定技能1号」の在留資格は5年間有効となっており、「特定技能2号」は在留資格の更新が何度でも可能で、家族を呼び寄せることもできます。 造船・舶用業分野は、2019年4月からの5年間で最大13,000人の「特定技能1号」外国人を受け入れる計画となっています。

2015年から、造船・舶用工業分野では、中国、フィリピン、ベトナムからの技能実習生の採用が始まっています。 それに対して、特定技能はほぼ全ての国から外国人の受け入れが可能であることから、技能実習の外国人より採用の幅が広い ことが特徴です。 今後も海外での特定技能試験の実施が増加していけば、さらに技術者が増え、即戦力としての外国人雇用がスムーズにできることが期待できます。

3.「造船・舶用工業」の特定技能試験について

特定技能には、「特定技能1号」「特定技能2号」の2種類の在留資格があります。 現在14分野ある特定技能の中で、「特定技能2号」の受け入れが認められているのは、「建設」と「造船・舶用工業」の2分野のみとなっています。

3-1「特定技能1号」の試験について

外国人技術者が特定技能1号として建設業で働く場合、特定技能試験に合格する必要があります。

特定技能試験には、日本語試験と、職種ごとの技能試験があります。 日本国際教育支援協会の日本語能力試験「N4」レベル、または、国際交流基金の運営する日本語基礎テストに合格し、 一般財団法人日本海事協会の運営する「造船・舶用工業技能測定試験」に合格することで、特定技能1号の在留資格が得られます。 また、実務経験を積んだ特定技能2号の場合は、上記に追加して、「造船・舶用工業分野特定技能2号試験(溶接)」の合格資格が必要になります。

造船・舶用工業技能測定試験」は海外でも行われ、現時点では、フィリピン、インドネシアにおいて受験が可能となっています。 造船・舶用工業分野の特定技能1号技能評価試験結果は、2019年11月にフィリピン (バコール)で行われた溶接の技能試験の合格率は50%、 2020年5月〜12月の間に東京で行われた技能試験の合格率は100%となっています。 「造船・舶用工業分野特定技能協議会」

2020年12月以降、コロナウイルス感染症の拡大により、特定技能試験の試験日時は未定となっています。 また、技能実習2号以上の3年修了者は、無試験で特定技能1号に在留資格を移行できます。

3-2「特定技能2号」の試験について

特定技能2号は、1号からの昇格が前提となっているため、日本語試験を受ける必要はありません。 そのため、試験は技能試験のみとなります。

4.特定技能「造船・舶用工業」の対象職種

2019年に、特定技能1号で従事できる業務は以下の6種と制定されました。

  1. 溶接(手溶接、半自動溶接)
  2. 塗装(金属塗装作業、噴霧塗装作業)
  3. 鉄工(構造物鉄工作業)
  4. 仕上げ(治工具仕上げ作業、金型仕上げ作業、機械組立仕上げ作業)
  5. 機械加工(普通旋盤作業、数値制御旋盤作業、フライス盤作業、マシニングセンタ作業)
  6. 電気機器組立て(回転電機組立て作業、変圧器組立て作業、配電盤・制御盤組立て作業、開閉制御器具組立て作業、回転電機巻線製作作業)

技術と関係のない準備や点検などの付属業務においても、特定技能外国人でも行うことができます。 特定技能2号で従事できる業務は、「溶接」のみになります。作業員の指揮、命令、管理する「監督者」としての業務が可能となります。

5.雇用について

5-1雇用形態

造船・舶用工業分野では、雇用は直接雇用のみと定められています。派遣での雇用はできません。

5-2給与

特定技能では、給与は日本人と同等か、それ以上にするよう定められています。 また、安定的に報酬の支払いをする必要があるため、基本的には月給制で、日給や日払いでの雇用は認められていません。 給与においては、3年以上の経験を積んだ人材と同等とすることが無難です。 特定技能外国人の技能によって昇級を行うということも記載しておく必要があります。

5-3人員の上限

介護分野や建設分野と違い、造船・舶用工業分野の企業が特定技能外国人を雇用するときの人員の上限はありません。 そのため、特定技能外国人の人数が、常勤職員の人数を上回っても問題ありません。

5-4転職について

「技能実習」では認められていない、同業種間での転職は、特定技能では認められています。 他業種への転職、アルバイトは不可能です。

6.受け入れ企業(特定技能所属機関)に求められる条件

特定技能外国人材を受け入れる企業(特定技能所属機関)は、特定技能外国人を受け入れた日から4ヶ月以内の間に、 国土交通省が設置する「造船・舶用工業分野特定技能協議会」の構成員になる必要があります。 特定技能外国人の適正な受入れと、外国人の保護に有用な情報を共有し、企業と協議会の連帯を図るためのものです。 そのため、受け入れ企業は、「造船・舶用工業分野特定技能協議会」に対して必要な協力を行わなければなりません。 また、受け入れ企業は、国土交通省、またはその委託を受けた者が行う調査・指導に対し、必要な協力を行う必要もあります。

外部の登録支援機関に特定技能外国人の支援計画の実施を委託する際は、上記の条件を全て満たす登録支援機関に委託する必要があります。 「造船・舶用工業分野特定技能協議会」

まとめ

造船・舶用業分野では、今後もさらに、人手不足が深刻化することが予想されます。 技能実習生として主に中国、フィリピン、ベトナムからの外国人を受け入れていましたが、そのほとんどが溶接での雇用だったため、この特定技能では作業内容の汎用性が高くなり、より雇用の幅が広がるというメリットがあります。

島国である日本にとって、「造船・舶用業」は海上輸送のための船舶をつくるための非常に重要な産業です。 また、船という特殊な労働環境であるがゆえに、作業が機械化されにくく、人間の労働力が必要な割合が多い分野でもあります。 コロナ収束後、特定技能試験の実施回数が増え、即戦力となる外国人技術者の雇用が進めば、この深刻な人手不足の状況が改善していくことが期待できます。