2021.07.27 ビザ・在留資格
著作・監修 北中彰 最終更新日: 2021/08/02

特定技能「宿泊」|外国人を宿泊業で雇用するためには?

特定技能「宿泊」|外国人を宿泊業で雇用するためには?

旅行や出張でホテルに宿泊をした際に、外国人スタッフの接客を受けたことはありますか?
日本では外国人労働者が年々増加しており、宿泊業界も、彼らが活躍する分野の一つです。
訪日外国人の増加から、ホテルの需要は高まるものの、従業員は人手不足の状態。
そこで、労働力として、また外国語でコミュニケーションができる人材として、彼らに期待が集まっているのです。
国としてもこの流れを後押ししており、「特定技能」での人材受入れを可能としました。
今回は、宿泊分野における特定技能と、その雇用方法についてご紹介します。

目次

  1. 宿泊業の多様なニーズに応える「特定技能」
    1. 特定技能が対象になった背景
    2. 対象となる仕事は「フロント」「企画・広報」「接客」
    3. 「風営法規定施設」や「簡易宿所」での就労はNG
  2. 宿泊分野における特定技能ビザの取得要件
    1. 技能試験の合格
    2. 日本語試験の合格
  3. 受入れ機関に求められる条件
    1. 適切な雇用契約
    2. 適切な支援
    3. 協議会への加入
  4. まとめ

宿泊業の多様なニーズに応える「特定技能」

特定技能制度とは、一定水準の技術と日本語能力を持った外国人材を受け入れる制度です。
2019年、国が労働力不足解消のために打ち出し、特に人材が不足する14分野において、受入れが認められることとなりました。
宿泊業もその一つで、積極的な制度の活用に取り組んでいます。

特定技能が対象になった背景

宿泊業が特定技能の対象となった背景には、二つのポイントがあります。
一つは「人手不足」、もう一つは「急激な需要増加」です。

人手不足

メディアに登場することも多く、華やかに見える宿泊業界。
しかし、各地のホテルや旅館では、就職希望者が増えず、離職率の高さに悩んでいます。
それは、「休みが取りづらい」「長時間にわたるシフト勤務」といった、労働環境の課題を抱えているからです。
また、給与の面でも、全産業の平均月給を7万円ほど下回っています。
低賃金で重労働、というイメージが定着し、人手不足に陥っているのです。

外国人旅行客増加による需要増

ここ近年、政府が力を入れて取り組んでいるのが、インバウンドによる経済の活性化です。新型ウィルスの蔓延により、現在その施策は一時中断の状態にあります。
しかし、状況が落ち着いたら、インバウンドによる経済効果はふたたび活発になると予想されます。
国土交通省観光庁の調査によると、横ばいの日本人宿泊者数に対し、外国人宿泊者数は大幅に増加しています。
人手不足にも関わらず、宿泊業界における働き手の需要は増えており、外国人材の活用が不可欠となっているのです。

対象となる仕事は「フロント」「企画・広報」「接客」

特定技能の外国人労働者が従事できる仕事は、宿泊施設における次の業務です。

  • フロント
  • 企画・広報
  • 接客及びレストランサービス

これらのような「宿泊サービスの提供に係る業務」に従事できるとされています。
チェックイン・チェックアウト業務や、問い合わせ対応、料理の配膳といった、直接接客する仕事から、キャンペーンの立案やウェブ発信といった裏方の仕事まで、任される業務は多岐に渡ります。
また、「ベッドメイキング業務」については、上記の仕事に付随して行うのであれば可能です。

「風営法規定施設」や「簡易宿所」での就労はNG

風営法に規定される営業所での就労や接待は、特定技能労働者の就労先として認められていません。
ラブホテルは風営法に規定される施設のため、特定技能の受入れは不可となっています。
その他にも、民宿やキャンプ場、ゲストハウスといった、「簡易宿所」と呼ばれる施設、下宿なども、特定技能受入れの対象外とされています。

宿泊分野における特定技能ビザの取得要件

特定技能は、1号と2号に分類されますが、宿泊分野で受け入れることができるのは、特定技能1号のみです。
また、特定技能として就労するためには、18歳以上であり、技能試験と日本語の試験、両方に合格する必要があります。

技能試験の合格

こちらは、ホテルや旅館で働く際に必要とされる知識や技能の水準と、業務に必要な日本語の水準を確認するための試験です。
「宿泊業技能測定試験」(主催:一般社団法人宿泊業技能試験センター)を受験します。
問われる内容は、「フロント業務」「企画・広報業務」「接客業務」「レストランサービス業務」「安全衛生その他基礎知識」の5分野について。
試験は国内外で実施され、2021年6月に実施された試験では、212名が合格しました。

日本語試験の合格

日本語能力の水準は、日常会話ができ、支障なく日本での生活が送れるレベルが求められます。
日本語試験も国内外で実施され、「日本語能力試験(JLPT)」(主催:独立行政法人国際交流基金/日本国際教育支援協会)、もしくは「国際交流基金日本語基礎テスト(JTF-Basic)」(主催:独立行政法人国際交流基金)を受験します。

また、これらの試験とは別に、宿泊業分野の2号技能実習を良好に修了することで、宿泊分野で特定技能活動が可能です。
仮に他職種の技能実習であっても、2号を修了していれば、特定技能における日本語試験は免除されます。

このように特定技能は、試験をクリアする、もしくは技能実習を修了することで、知識と日本語力が一定水準以上であることを確認できます。
外国人労働者の受け入れ経験がない企業にとっては、彼らのスキルやコミュニケーション力に対する不安を、和らげることができますね。

受入れ機関に求められる条件

受入れ機関(受入れ企業、所属機関ともいいます)は、自社で海外の送り出し機関と直接連絡を取るか、国内にある人材紹介会社から紹介を受ける形で、特定技能労働者を採用します。
特定技能を受け入れる企業には、次のような条件が求められます。

適切な雇用契約

採用決定後は、特定技能労働者との間で、適切な雇用契約を結ぶことが大前提です。
その中でも特に注意したいのが、次の二点です。

直接契約

宿泊分野での特定技能受け入れは、直接契約のみ可能です。
派遣契約で雇用することはできません。

日本人と同等以上の待遇

報酬を含めた、福利厚生や待遇面では、同じ仕事をする日本人と同等以上にしなければなりません。
外国人であることを理由とした、差別的取り扱いは禁止されています。
参考:「特定技能雇用契約及び一号特定技能外国人支援計画の基準等を定める省令」の第1条

過去に日本では、外国人を低賃金で雇用することが社会問題となりました。
特定技能の受入れを検討する企業は、「安く雇える労働力」という認識でいると、トラブルにつながる恐れがあります。
「グローバル人材」として、日本人労働者と同じだという認識を持つ必要があるのです。

適切な支援

特定技能で労働者を受け入れるためには、彼らへの支援が法律で義務付けられています。
入国前に契約や活動の内容をガイダンスすることから始まり、出入国時の送迎、生活支援、知識や情報の提供など、その内容は多岐にわたります。
このような支援を、彼らが十分に理解できる言語で行う必要があるのです。
企業自身がこの支援体制を整えるか、もしくは「登録支援機関」に委託する必要があります。

協議会への加入

受入れ企業は、特定技能の受入れから4ヶ月以内に、「宿泊分野特定技能協議会」の構成員にならなければなりません。
これは、企業同士の情報共有や、不正予防、また、特定技能の受入れ状況を把握するといった目的で、国土交通省が運営する組織です。
特定技能制度の懸念点として、特定技能労働者が大都市圏に過度に集中することが挙げられます。
協議会は、全国的な人材状況を把握し、関係機関や宿泊業界団体などと連携することで、地方の人手不足に対応するといった役割もあります。
詳細は国土交通省観光庁のホームページに記載されており、入会に必要な書類もこちらからダウンロードできます。

まとめ

宿泊業界は、他の業種と違い、機械による自動化が難しい分野です。
それゆえ人手不足は、企業存続にかかわる最大の課題と言えるでしょう。
現在外国人材を受け入れていないホテルや旅館も、近い将来、その活用を検討することになるかも知れません。
優秀なグローバル人材の取り込みを視野に入れ、これから迎えるアフターコロナの時代に向けた準備を始めてはいかがでしょうか。

【参考】
官公庁「宿泊分野における新たな外国人材受入れ(在留資格「特定技能」)」
官公庁観光産業化「観光や宿泊業を取り巻く現状及び課題等について」